『ももへの手紙』観てきたので

沖浦氏がまたアニメ映画を作ったと聞きまして、意気揚々と映画館に赴きましたわけで。

沖浦啓之といえば、そのスジの映像愛好家〈一般的にアニメオタクという〉からは、一目置かれる超一流のアニメーター。
『攻殻機動隊』『イノセンス』などの押井映画をはじめ、プロダクションI.G.が得意とするハイクオリティなアニメ作品に数多く携わり、押井守も呆れるほどの “緻密で、丁寧で、ねちこい芝居” を作画し、マニアを唸らせてきた。

そんな沖浦氏が久々に監督した作品は、何と言うか…オモテヅラかなり《ジブリ的》なヒューマンドラマ。

いわゆる『攻殻機動隊』からの流れを汲む、ダークトーンでドンパチ系のアニメとは極端に対照的なビジュアルに、往年のファン達も意表を突かれたと思う。

個人的に、沖浦氏の初監督作品『人狼』のDVDをつい最近見返したばかりだったので、180°テイストの違う本作がどのような仕上がりなのか、半信半疑で映画館に行って参りました。

以下、多少ネタバレ含みます。（←一丁前に気遣い）

何と言うか…普通に面白く、普通に感動できる作品でした。

期待を裏切る事もなく、期待を上回る事もなく…って、なんか面白くなかったような書き方だけど、いろいろとよく出来ていたと思いますよ。（偉そうだな）

エピソードとしてはちょっとありがちな展開だったし、いわゆる “都会から来た女の子・田舎デビューしちゃいます” 的映画だったんで、作品全体の印象がやや平凡なのかもしれない。

ファンタジーに絡めて親子の絆を描くってのも、ジブリを発端とした日本のアニメ映画が得意とする定石パターンだよな〜って感じもちょっとした。

しかし、そこは安定のI.G.、安定の沖浦。

さすがにクオリティの高い、ジャパニメーション（死語）となっておりました。

ワタクシ的に、冒頭はかなり “オタク目線” で観る余裕がありまして、お母さんのスカートの皺（しわ）の動きが、もぉ〜〜沖浦もイイ加減マゾだぜ〜とかそんなところばかり注目してたんですが、いつの間にかすっかりストーリーに引き込まれてしまいました。

ドラマとして、テンポ良く・分かりやすくで、良かったんじゃないでしょうか。

お母さん役の声、なんか聞いた事あるけど誰だっけなー、なかなかイイ芝居するなーと思ってたら、エンドロールに優香って書いてあってビックリした。
なんか志村けんのコントのイメージしかなかったけど、なかなかやりますな、優香も。

著名人使おうとして、いつもアレな感じになってる某ジブリとは全然…。
いや、やめておこう。

とにかく本作は、ファミリーで観るも良し、カップルで観るも良し、オタク目線で沖浦作画を堪能するも良しの秀才映画。

やたら美人でナイスバディのお母さんに未亡人フラグが立っちゃう野郎共もいるでしょうし、またアッチ系の人は、ももちゃんのスク水の質感に萌えざるを得ないことでしょう。

幅広い層の人たちに受け入れられそうな本作は、これから評価が上がって行くのかもしれません。

世間の噂などはあまり耳にしませんが、果たしてゴールデンウィークは集客できたんでしょうかね。角川さん？

そのために通したような企画なんじゃないかってのは、なんとなく分かるんだけどね〜。
大人の事情的に。

個人的には夏をテーマにした作品はやっぱり夏に観たかったな〜って思いました。

瀬戸内海の島々に行ってみたくなるような、夏の海の気持ち良さがとても良く表現されている映画ですからね。

ジブリ映画がパッとしない昨今、これからはI.G.作品にも充分に期待できそうですな。

沖浦監督もお疲れさまでした。