風の吹くまま、気の向くまま、何を観るかは “気分” 次第…

最近よく映画を観ている。

家でだけどさ。

実写映画版『ヤマト』のレビューを漁っている時にたまたま見つけた、TBSラジオ『ウイークエンドシャッフル』の映画評論コーナを聴くのが楽しみになったこともあり、ここで取り上げられている作品を中心に色々観る様になった。
偶然にもGEOが1枚50円レンタルなんて無茶な企画をしていたことも追い風となり、この歳になって初めての「レンタル・ビデオ」を活用しているわけですが、まぁ今時のレンタルといったら、ネットでポチポチと選んだ2日後には自宅にDiscが届くという、人間をダメにしそうな便利システム。
おまけに返す時は郵便ポストに放り込んでくれればいいよという手軽さは、簡単すぎてむしろ怖い。
7・8枚借りて送料込みで600円って、今まで数千円払ってメディアを買っていたのは何だったんだって思うけど、逆にたった50円や100円で観ちゃうのは映画やアニメを作った人たちに悪いなぁとも思っちゃったりします。


思い返すと、4月頃に “文芸に目覚めた” とか言って【映画を観よう・本を読もうキャンペーン】を実施したものの、予想通りひと月坊主に終わっている。
やっぱり、興味のあるコトには積極的に取り組むべきだと思い直し、これからは週末などにきちんと「映画を見る時間」をつくろうと決めてみた。
そういう姿勢で改めて映画を楽しんでいるうちに、“映画って最も簡単に現実逃避できる娯楽装置なんだな”って実感するようになった。
薄暗い部屋の中(もしくは映画館)で、映画内の世界に没頭している間、心はしばし現実世界の時間軸を離れることができる。
ストーリーや内容の出来・不出来に関わらず、画面内の登場人物なりに心を通わせているうちに、その世界の現実を追体験しているような感覚に入り込めるのが、妙に心地イイと思えてしかたない。(何か清志郎くんっぽいコト言っちゃったな〜)
「いや、映画って元来そういうもんだから」って言われるかもしれないけど、これは今までどちらかというとテレビ放映の映画ばかり観てきたボクだからこそ実感できることなのだろう。
CMによって約15分に1回現実に引き戻される“テレビ映画”では、実はその映画世界に没頭できていなかったということなのかもしれない。

映画というコンテンツの魅力を改めて認識すると同時に、時間さえ確保できれは毎日でも興味のある映画が観られる環境が整ったわけだけど、調子に乗っているとまたすぐに飽きちゃうかもしれないし、お財布にも厳しそうだ。
現実逃避もほどほどにしておこう、…と思いながらも、またひとつレンタルカートをポチってしまうのでした。

参考までに、最近シネマ・ハスナ〜で取り上げた映画はコチラ。

ぼくのエリ 200歳の少女監督/トーマス・アルフレッドソン
昔テレビで紹介されてた映像をチラッと見て、きっとハートウォ〜ミングで素敵なファンタジー映画なんだろうと勝手に想像していたために、観始めてみると「これ、ホラーだったのかよ!」っていう衝撃は大きかった。
ただ、エグイシーンもある割に、素朴なスウェーデンの情景を中心にキレ〜イな映像にまとめてあるせいか、普通のホラーとはちょっと印象が違う。
ストーリーよりも、印象的なシーンがいくつも記憶に残りそうな、そんな作品。


グラン・トリノ監督/クリント・イーストウッド
ハリウッド版「ベストキッド」って感じ?
宇多丸さんはもの凄く高く評価していますが、正直なところそこまでの感動は得られなかった。本人も収録の中で言ってますが、ハリウッドを牽引してきたクリント・イーストウッド最後の作品ってことで、ちょっと映画オタクとしての感情移入が過多になっていたご様子。
映画のテーマ自体アメリカの文化に添ったものなので、日本人のボクには率直に理解できないところもあるのかもしれない。


赤目四十八瀧心中未遂監督/荒戸源次郎
少し前に寺島しのぶという女優が何やら海外の映画祭で賞を獲ったというニュースを見て興味が湧き、出演作を観てみようかと思ったわけです。
ジメジメとして暗い場面が続くので、暗くてつまらないって評価する人も多いみたいですが、狂気に満ちた大阪のアングラ世界を怖々覗き見るような感覚は、ボクは意外と興味深く観れました。
なぜか暗い部屋に閉じこもって黙々とホルモンを調理しなければならないシチュエーションとか、観ているだけで鬱になりそうだけど、印象深くて記憶に残りそう。
ラストの表現をどう解釈するかで、見る人の評価が大きく分かれると思うけど、ボク的には、ひょっとしてコレ、作家(?)である主人公の妄想というか夢オチに近い映画だったのかな〜と感じたりしてます。


キャタピラー監督/若松孝二
寺島しのぶブルーリボン賞主演女優賞を獲ったという話題の?作品ということで。
本作の元ネタになっているという江戸川乱歩原作の“漫画版『芋虫』”を、偶然にも数年間に買って読んでいたので、ビジュアル的な衝撃は受けなかった。
寺島しのぶが体を張った激しいSEXシーンとかが話題になったりしたようですが、その辺の見せ方は漫画の方が数倍露骨でインパクトも強烈。
もっとエロくてグロイのがお好きという人には、断然漫画版の方がオススメですね。
全編通して薄い反戦映画のような作りで、ストーリー的にも漫画版の方がもっと泣ける感じになってます。


『パプリカ』監督/今 敏
今さん亡くなられちゃったんでしたっけ?
クオリティの高い作品を作る方だったので残念ですね。
大友克洋と組んで作った『パーフェクト・ブルー』は当時 VHSを買って観たけれど、最高に良かった。
その後も、温度で色が変わる初回限定版ケース仕様の 『千年女優』のDVDとかも買ったりしましたよ。
本作は…映像のクオリティはさすがの一言だけど、ちょっとクライマックスの決戦のところがよく分からなかった。
夢の世界が現実に?って、アニメだからといって、理屈抜きで押し通すのは無理がないですか?
ボクが理解できてないだけかもしれないけど。
二役を旨く演じ分けためぐさんは、さすが大御所!としか言いようが無い。ヒロインキャラの魅力が、もの凄く引き立ってましたもの。


『カラフル』監督/原 恵一
ファンタジーではあるけど、適度なリアリティーを保っているところがとても面白かった。
緻密に描き込まれた絵柄もリアル感を増していると思うけど、現代的な人間描写みたいなものが作画を含め的確に描かれているのが素晴らしい。
終盤で爽快なカタルシスを得た後には、“ホントにこんなコトあるのかもね〜” なんて思わず妄想したくなるような、ポジティブな気分になれる作品だった。


愛のむきだし監督/園 子温
宇多丸さんのランキングも上々で、ゲーム脳ばとのカイ君もおすすめだってことで観てみたけど、正直なところ、日曜日を半日潰して観る価値があったのかな〜って感想。
あと、長い長いとは聞いてたけど、想像を越える長さだった〜。DVD2枚分はダテじゃない。劇場ではコレ休憩無しで一気に放映したわけ?
コメディなのかと思いきや、終盤はウルッとくる純愛モノ展開だったり、なかなかつかみ所のない雰囲気。
ストーリー的にはDiscが切り替わるあたりで盛り上がってくるわけだけど、何しろ長過ぎて前半の伏線とか忘れかけたりしてんだよね〜。
一体どの辺りがおすすめポイントなのか、シネマハスラーの評価を聞くのが楽しみなところ。
ヒロインの満島ひかりって初めて知ったけど、カワイイ顔して体当たりな演技もこなす、なかなかやり手な娘ですな。


大日本人監督/松本人志
世間の評判は散々のようだけど、“天才”松本人志のすることだから、問題のラスト15分についても実は深いメッセージとかがあるんじゃないかと、どうしても勘ぐりたくなってしまう。
色々なレビューを読んで知ったけど、日本を取り巻く諸外国との防衛問題みたいなものも裏テーマにあるみたいで、そうしたメッセージを含ませるにしても、庶民にはあまりにも敷居の高い映像表現となってしまった。

全編通してダメ出ししている人もいっぱいいるけど、ボク的には最後の切り替わりのところまではそんなに悪くないと思った。
それだけに、普通の映画作品として観終わることができなかったのが残念でならない。
惜しいよ、松っちゃん!

やたらお金をかけたというVFXは良く出来ていいて、本当に街なかで巨人があばれているようなリアリティがしっかり表現されている。
欲を言うとあの戦闘シーンに、逃げ惑う市民の姿もちゃんと描いていれば、もっとリアリズムが出たと思うし、市民が大佐藤を嫌っている設定にも説得力が出たと思う。
あと、四代目の全盛期を記録したというモノクロ映像とかも本当に良く出来ていて感心する。
笑いの部分では、変身直前デカパンに足を通した時ち◯このところに顔がくる表現とか、「愛情注いだ娘に、電流注げますか?」など、思わずクスリとしてしまう松本人志ならではの笑いもチョイチョイ見られる。
全編そういう笑いに溢れた作品みたいなものを期待していた、という人が多いのも分かるけどね〜。
松本人志は芸人として既に強烈なキャラクターを持っている人なので、主演は本人が演じないほうが良かったのかもしれないナ〜とも思った。